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IgA高値のIgG4-RDに関する論文報告
柘植俊介医師がIgA高値のIgG4-RDに関して、Modern Rheumatologyに報告しました。
High serum IgA levels in patients with IgG4-related disease (IgG4-RD) are associated with mild inflammation, sufficient disease-specific features, and favorable responses to treatments
Shunsuke Tsuge, Ichiro Mizushima, Makoto Horita, Hiroyuki Kawahara, Hajime Sanada, Misaki Yoshida, Yoshinori Takahashi, Takeshi Zoshima, Ryo Nishioka, Satoshi Hara, Yasunori Suzuki, Kiyoaki Ito, Mitsuhiro Kawano.
Mod Rheumatol. 2023 Jun 12;road056. doi: 10.1093/mr/road056. Online ahead of print. PMID: 37307433
2019ACR/EULAR分類基準によりIgG4-RDの診断は格段に進歩しましたが、実臨床においては同基準を満たすnon-IgG4-RDも経験され、依然としてIgG4-RDと非IgG4-RDを正確に区別することが重要な課題です。
高IgA血症は、IgG4-RDの重要なmimickerであるキャッスルマン病とIgG4-RDを鑑別するための重要な血清学的マーカーの一つとされており、2020 exclusion criteria(Pathol Int 2020, Pathol Int 2022)では除外項目の一つとされています。しかし実臨床においてはIgG4-RDと確定診断できる症例の一部で血清IgAの上昇を伴うことが経験されます。これまで高IgA血症を伴うIgG4-RDの頻度と臨床的特徴についてはほとんど知られておらず、本研究ではIgG4-RD患者の血清IgA高値の頻度と、血清IgA値が高い患者(IgA高値群)とそうでない患者(IgA非高値群)の臨床的差異を後方視的に検討しました。
IgG4-RD患者169人のうち血清IgA高値を認めたのは17人(10.1%)でした。IgA高値群の方がIgA非高値群よりCRP軽度高値、貧血を伴いやすく、再発率が低い特徴がみられました。その他の臨床的特徴については、疫学、検査所見、罹患臓器数・分布、診断・治療関連の項目およびIgA高値を呈する併存疾患の有無を含め調査しましたが、群間差はみられませんでした。
IgA高値群17症例のうち5例(29%)でCRP高値を認め、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、大動脈周囲炎の合併や原因不明の慢性炎症を伴う症例でした。グルココルチコイドへの反応性については、高IgA血症を伴う症例においても血清IgAが正常なIgG4-RD患者と同様、非常に良好でした。またその機序は不明ですが、血清IgA値の上昇が再発率低下と関連していることが示されました(ハザード比0.996、95%信頼区間0.993-0.999、p=0.019)。
本研究で得られた知見は、実際の臨床現場において血清IgA値が高いIgG4-RD患者は一定数存在し、血清CRP値の軽度上昇や炎症性貧血、他の炎症性疾患の合併などの特徴はあるものの、血清IgA値が正常な患者と同じように診断・治療できることが示唆されました。