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IgG4関連リンパ節症が疑われてから7年の経過観察後に腎・膵病変を発症した症例
吉田美咲医師が、IgG4関連リンパ節症が疑われてから7年の経過観察後に腎・膵病変を発症した症例を報告しました。
Development of IgG4-Related Pancreatitis and Kidney Disease 7 Years After the Onset of Undiagnosed Lymphadenopathy: A Case Report
Misaki Yoshida, Ichiro Mizushima, Shunsuke Tsuge, Yoshinori Takahashi, Takeshi Zoshima, Ryo Nishioka, Satoshi Hara, Kiyoaki Ito, Mitsuhiro Kawano
(Mod Rheumatol Case Rep. 2022 Aug 11;rxac065. doi: 10.1093/mrcr/rxac065.)
IgG4関連疾患はほぼすべての臓器に影響する可能性のある線維性炎症性の病態で、患者は異時性に病変を認めることもあります。しかし、典型的な臓器病変を伴わないIgG4関連リンパ節症が疑われる患者の管理方針は確立されていません。また、IgG4関連疾患の自然経過はよくわかっていません。
私たちはIgG4関連リンパ節症が疑われてから7年の経過観察を経てIgG4関連膵炎・腎臓病と診断できた症例を経験しました。
40代女性が、非特異的愁訴にて受診した医療機関において、画像検査上、腹腔内リンパ節腫大を指摘されました。腹腔鏡下腹部リンパ節生検を施行され、リンパ節の病理所見ではreactive follicular hyperplasiaを認め、IgG4免疫染色でIgG4陽性の形質細胞の浸潤を認めました。血清IgG4値の上昇(558mg/dL)も認めたためIgG4関連疾患が疑われましたが、リンパ節腫脹以外の臓器病変は見つからず年1回のフォローアップのCTを継続することとなりました。7年後、造影CT検査で膵尾部と左腎臓に低吸収域の病変を認め、両臓器の病理所見においても好酸球の混在するリンパ球形質細胞浸潤、浸潤IgG4陽性細胞数 160個/強拡大視野、IgG4+/IgG+細胞の比率はほぼ100%という所見を認め、IgG4関連膵炎および腎臓病と診断しました。患者はプレドニゾロンが投与され、治療開始2ヶ月後には病変の改善を認めました。
IgG4関連リンパ節症は、病理所見において多数の病型を認めますが特異的な所見を認めず、病理所見のみでの診断は困難です。本症例のようにリンパ節に限局している場合は慎重な経過観察が勧められています。リンパ節腫脹を経過観察することでIgG4関連疾患による他臓器病変を比較的早期に発見できる可能性があります。