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varicella-zoster virusの再活性化による肺炎と中枢神経感染症を呈した生体腎移植患者の症例報告とliterature review
髙橋特任助教がvaricella-zoster virusの再活性化による肺炎と中枢神経感染症を呈した生体腎移植患者の症例報告とliterature reviewをCEN case reportに報告しました。
Pneumonia and central nervous system infection caused by reactivation of varicella zoster virus in a living donor kidney transplantation patient: case report and review of the literature.
Takahashi Y, Hara S, Hoshiba R, Hibino S, Ito K, Zoshima T, Suzuki Y, Inoue D, Mizushima I, Fujii H, Kawano M.
CEN Case Rep. 2021 Jan 27:1–8. doi: 10.1007/s13730-021-00576-z. Epub ahead of print.
水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)は初感染で水痘を発症します。その後潜伏感染し、加齢や免疫低下の影響で限局した部位に皮膚症状として帯状疱疹を生じるのが一般的ですが、皮膚病変を生じない「zoster sine herpete」や広範な皮膚病変・臓器病変を伴う播種性VZV感染症と様々な臨床症状を呈し、診断に難渋して予後が悪くなることがあります。
今回我々は、生体腎移植患者で臓器病変が皮膚病変に先行した播種性VZV感染症の症例を経験しました。皮膚症状がなく発症早期の診断は困難でしたが、皮膚症状出現後は播種性VZV感染症を疑い、唾液の核酸増幅検査により迅速な診断と治療を行うことができ、良好な経過をたどりました。通常、VZV肺炎は気管支肺胞洗浄液の核酸増幅検査で診断しますが、本症例の様に非侵襲的な唾液検査も診断に有用である可能性が示唆されました。また我々は、腎移植患者で肺病変もしくは中枢神経病変(または両方)を呈した播種性VZV感染症の過去の報告をliterature reviewしました。発症時期は移植後2週間〜11年間と幅広く、腎移植後はいつでも発症する可能性があることが判明しました。また、臓器病変が先行した報告では皮膚症状が出現するまでに最大21日間かかることが分かりました。以上より腎移植患者では、肺炎や中枢神経感染症の発症時に、皮膚症状がなくてもVZV感染症の可能性を常に念頭に置くべきであると考えました。
最近本邦でも不活化帯状疱疹ワクチンが認可され、50歳以上で接種可能となりました。従来の生ワクチンでは接種不可能であった腎移植患者を含めた免疫不全患者での有効性も期待されており、今後の研究が待たれます。