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混合性結合組織病患者に於ける検尿異常の臨床的意義についての研究
西岡特任助教と蔵島特任助教の混合性結合組織病患者に於ける検尿異常の臨床的意義についての研究がModern Rheumatology誌に発表されました。
Urinary abnormality in mixed connective tissue disease predicts development of other connective tissue diseases and decrease in renal function.
Nishioka R, Zoshima T, Hara S, Suzuki Y, Ito K, Yamada K, Nakashima A, Tani Y, Kawane T, Hirata M, Mizushima I, Kawano M.
Mod Rheumatol. 2021 Mar 30:1-8. doi: 10.1080/14397595.2021.1899602.
混合性結合組織病(MCTD: Mixed Connective Tissue Disease)は膠原病重複症候群(オーバーラップ症候群)の一病型であり、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎のうち2疾患以上の症状の重複を呈する他、抗U1RNP抗体の出現、レイノー現象、手指腫脹といった特有の症状を呈します。腎合併症も多彩なMCTDの症状の一つですが、肺高血圧症の様に重篤化して生命予後に関わることは稀であると認識されており、その臨床像は十分に明らかにされていません。
今回の研究では、「日常診療でルーチンに実施する尿検査の異常がMCTD患者に於いては何を意味するか」にfocusして多施設共同の後ろ向き研究を行いました。結果、検尿異常(+)群では新たな膠原病を合併する頻度が有意に高いことが判明しました。また、検尿異常(+)群では長期的な腎予後が検尿異常(-)群に比べて悪い傾向も認められました。
これらの結果より、MCTD患者で検尿異常を認めた時には、①新たな膠原病の合併を念頭に精査すること、②その後の腎機能推移に注意を払うことが大切という新たな日常診療のヒントを得ることができました。
疾患概念が提唱されて以来、MCTDは個別性のある独立疾患であるという考えが浸透してきた一方で、単に膠原病の重複であると見做す意見も根強くあります。「免疫異常に伴い身体に生じる様々な事象を線引きし、疾患として分類すること」の困難さを感じる疾患ですが、今回の研究の様に一つ一つの症候が持っている意味の検討を積み重ねていくことで “MCTD”の全貌が少しずつ見えていくのではないかと思います。