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日常臨床におけるIgG4関連疾患国際分類基準の診断精度と留意点に関する論文
水島助教が日常臨床におけるIgG4関連疾患国際分類基準の診断精度と留意点についてRheumatology (Oxford)誌に報告しました。
Positive disease-specific autoantibodies have limited clinical significance in diagnosing IgG4-related disease in daily clinical practice.
Mizushima I, Yamano T, Kawahara H, Hibino S, Nishioka R, Zoshima T, Hara S, Ito K, Fujii H, Nomura H, Kawano M.
Rheumatology (Oxford). 2020 Dec 12:keaa783. doi: 10.1093/rheumatology/keaa783. Online ahead of print.
IgG4関連疾患(IgG4-RD)は、血清IgG4高値、病変組織へのIgG4陽性細胞浸潤、臓器の腫大・腫瘤形成、線維化を特徴とする疾患で、我々の教室では本疾患の研究を精力的に行っています。
日本、アメリカ、ヨーロッパのIgG4-RDのエキスパートたちによって作成され、2019年に公表された国際分類基準は、97-99%という極めて高い特異度(偽陽性が少なく、基準を満たした場合にIgG4-RDである可能性が高い)を有するとされています。一方で、特異度には劣るものの82-86%と感度も良好であるとされています。しかしながら、日常臨床においても同基準が極めて高い特異度や比較的良好な感度を示すのかについて、検証が必要でした。
当グループで診療するIgG4-RD患者さん、同疾患を疑われたが最終的に他疾患と診断された患者さんについて、国際分類基準にあてはめて分類したところ、特異度は極めて高いまま(100%)でしたが、感度は既報よりも劣っていました(73%)。当グループで診療する患者さんでは、「他疾患と関連する自己抗体」が陽性のために分類基準を満たさなかった方が多く、感度が劣った要因の一つでした。しかしながら、そのような自己抗体陽性の患者さんもその抗体に該当する他疾患はほとんど発症せず、分類基準を満たした患者さんと同様の典型的なIgG4-RDの病像を呈していました。これらのことから、日常臨床において、他疾患の典型的な症状を伴わず自己抗体陽性のみの患者さんでは、国際分類基準に基づいてIgG4-RDの診断を避ける必要性は低いものと考えられます。