金沢大学附属病院 リウマチ・膠原病内科

トピックス

ANCA関連腎炎に関する論文 

 蔵島特任助教がANCA関連腎炎に関する論文をClin Exp Nephrolに発表しました。

ANCA-associated nephritis without crescent formation has atypical clinicopathological features: a multicenter retrospective study

Takeshi Zoshima, Kazuyuki Suzuki, Fae Suzuki, Satoshi Hara, Keishi Mizuguchi, Kiyoaki Ito, Ichiro Mizushima, Hiroshi Fujii, Hideki Nomura, Mitsuhiro Kawano 

Clin Exp Nephrol. 2020 Nov;24(11):999-1006. doi: 10.1007/s10157-020-01925-5. Epub 2020 Jul 10. 

ANCA関連腎炎では半月体形成性糸球体腎炎を呈することが典型的ですが、半月体のない症例の臨床病理学的な特徴はこれまで明らかではありませんでした。

今回、当科や関連病院で腎生検を施行した146例のANCA関連血管炎において、半月体のある群とない群を後ろ向きに比較しました。

その結果、半月体のない症例は全体の17%を占め、半月体のある症例よりも腎生検時の腎機能は良好で、検尿異常も軽度でしたが、炎症反応(CRP)は高く、腎外病変を多く認めました。

病理学的には、半月体のない症例は動脈炎を多く認めました。

カプラン・マイヤー法では2群で腎・生命予後に差はありませんでした。

Cox回帰分析では腎生検時の腎機能、病理学的なsclerotic class、腎外病変が腎・生命予後に関連していました。

競合リスク解析では腎生検時の腎機能とsclerotic classが腎予後に、腎生検時の腎機能と腎外病変が生命予後に関連していました。

以上より、半月体のないANCA関連腎炎は腎生検時の腎機能は良好ですが、腎・生命予後は半月体のある症例と変わりなく、特に腎外病変に注意する必要があることが分かりました。

この研究は、ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)やアメリカ腎臓学会(ASN)で発表し、Clinical and Experimental Nephrologyに受理されました。