金沢大学附属病院 リウマチ・膠原病内科

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薬剤性ANCA関連血管炎症例のCase report 

Contribution of HLA-DRB1 * 09: 01 allele to development of minocycline induced antineutrophil cytoplasmic antibody (ANCA)-associated cutaneous vasculitis: report of two cases.

Hiroyuki Kawahara, Akikatsu Nakashima, Takeshi Zoshima & Mitsuhiro Kawano.

Modern Rheumatology Case Reports, DOI: 10.1080/24725625.2020.1738983

ANCA関連血管炎の中には、バセドウ病治療薬であるプロピルチオウラシルのように薬剤によって誘発される血管炎が知られています。まれではありますが、抗生物質のミノサイクリンもANCA関連血管炎を引き起こすことがあります。石川県立中央病院腎臓内科・リウマチ科でミノサイクリンによる皮膚型の血管炎を2例経験して、HLAを検査したところHLA-DRB1*09:01が検出されました。HLA-DRB1*09:01は日本人における頻度は14.55%ですが、ANCA関連血管炎の一つである顕微鏡的多発血管炎(MPA)の遺伝的背景因子として知られています。この2例から、ミノサイクリンによる皮膚型の血管炎が顕微鏡的多発血管炎(MPA)と共通の遺伝的背景を有している可能性が示唆されました。更に同様な症例が集積され、この知見について検討が進むことを期待しています。 本論文の著者の川原先生の健闘ぶりについても紹介したいと思います。石川県中の研修医時代の川原先生に、1例目を2017年9月の中部リウマチ学会、2例をまとめて2018年の日本リウマチ学会(JCR)の医学部学生・初期臨床研修医のセッションに発表してもらい、奨励賞を受賞しました。その後、川原先生が是非、英文でまとめて投稿したいとのことでModern Rheumatology Case Reportsに投稿しました。厳しい査読者のコメント・要求に応えるRevisionには10ヶ月かかりましたが、2020年3月にようやくアクセプトされました。アクセプトまでには多くの労力と時間を要した論文でしたが、同Journalホームページの論文の閲覧数(view)は、3月19日に掲載されて以降あっという間に閲覧数が増え、2020年5月20日時点で207 viewsを獲得し、2020年のModern Rheumatology Case Reportsに発表された論文のなかでは他を圧倒してトップを走っています。川原先生には今後のますますの活躍を期待したいと思います。