金沢大学附属病院 リウマチ・膠原病内科

ご挨拶

リウマチ・膠原病内科長(病院臨床教授)
川野 充弘


 2019年4月の金沢大学内科臓器別再編に伴い、リウマチ・膠原病内科として新しい研究室が立ち上がりました。
 リウマチ内科医の診療は、患者さんの言葉に真摯に耳を傾けることから始まります。内科の中では、総合診療科に一番近い科ではないかと思っております。リウマチ・膠原病内科に紹介されてくる患者さんの症状は非常に多岐にわたっており、中には、教科書の記載だけでは説明できないような患者さんに遭遇することもあります。そんな時、無理やりどれかの疾患に当てはめて診断・治療しているのが現状です。しかし、患者さんの個々の病態を医学の教科書に当てはめてこれまでにわかっている病気の中だけで診断するのが、医療のすべてではありません。いずれにも当てはまらない症例に出会った場合、常に、これまでにまだ解明されていない病態の可能性も考えて診療に当たることが大切です。
 ある時、内科外来から、高血圧の患者さんで口が渇いて困っている患者さんがいて、シェーグレン症候群ではないかと紹介がありました。ところが、シェーグレン症候群の最も重要な血清マーカーである抗SSA/Ro抗体は陰性でした。非常に高度な口腔の乾燥所見以外、その他の膠原病らしい所見はありません。血液検査をすると強皮症のマーカーである抗セントロメア抗体のみが強陽性でした。しかし、皮膚硬化はもちろんのこと強皮症の重要な症状であるレイノー現象も認めませんでした。この症例が契機となり、抗セントロメア抗体陽性原発性シェーグレン症候群の発見につながりました。
 私が医師になった1987年には、抗好中球細胞質抗体 (anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA) はまだ発見されておらず、顕微鏡的多発血管炎やANCA関連血管炎の疾患概念すらありませんでした。それが、今日では、顕微鏡的多発血管炎は血管炎の中で最も多い疾患です。月並みな表現ですが、医学は日進月歩で発展しています。リウマチ・膠原病に携わる先生方や患者さんと明日の膠原病医療を一緒に作っていくことを私たちのグループの一番の目標にしたいと考えております。